来週12月9日-13日週の為替相場は、対ドル、対欧州通貨を中心とした円安の持続と調整円高をにらんだ展開となる。

前週は過熱調整による円高の場面があったが、最終的には円安が再加速。米国の雇用統計や失業率が予想を上回り、ドル/円ではドルがサポートされた。
一方で17-18日の米FOMCですぐに量的緩和(QE)縮小が決められるほどには強くなかったほか、平均賃金やPCEデフレーターといったインフレ指標が落ち着いていたことで、過度なQE縮小警戒が抑制された。米国株が大きく反発したことで、クロス円ではリスク選好の円安が進展している。

来週は9日からFRB幹部による講演が相次ぐため、QE縮小の行方に注目が集まりやすい。12日の米小売売上高などの米国指標と合わせて、日々の要人発言や指標に一喜一憂となりそうだ。
ただし、昨年4-9月に比べると、QE縮小警戒による市場混乱は限定的になってきた。引き続き過熱調整による日米の株安と円高の「ガス抜き」を挟みつつも、対ドル、対欧州通貨ともに円の戻り売り(外貨の押し目買い)地合いが意識されやすい。

とくにテクニカルでユーロ/円、ポンド/円は、2008年の高値まで強力な上値抵抗ラインが乏しい「真空ゾーン」に入りつつある。2008年からの急落道程を逆回転で登りつめる形での上昇エネルギーを秘めている。スイス/円も1990年の高値まで、壁となる上値抵抗ラインが少なくなってきた。
ドル/円はまず5月高値103.70-75円の上抜けが焦点となる。複数回での上抜けトライと調整的な下押しを重ねながらも、来年にかけてまずは105-106円方向が注視されそうだ。

ただし、海外勢の年末決算に向けた手仕舞いや実質クリスマス休暇モードなどで市場取引が細っていくだけに、ちょっとした悪材料で調整的な株安と円高に振れるリスクは厳然と警戒される。
テクニカルではドル/円、クロス円ともに、5日移動平均線や21日線、25日線などからの上方乖離を埋める各ライン方向への調整余地を常に秘めている。

調整円高の材料としては、FRB幹部によるQE縮小の支持発言や、FRBによる米国債の買い入れオペ強化などによる米長期金利の上昇歯止め努力、欧州での早期の追加緩和後退と英国での住宅引き締め策の強化などによるリスク回避の円高や調整的なユーロ安とポンド安、米英独での金利上昇による世界景気の失速、他国からの円安牽制、中国と北朝鮮を巡る東アジアの地政学リスク、特定秘密保護法案の強行可決などによる安倍政権への批判の高まりと政権の勢い失速などに注意を要しよう。